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コンフリクト(対立)に満ちた人間関係和解には、第三者を介する対話が有効

「息子には絶対、遺産は譲りません」家庭裁判所での調停に臨み、

ある父親は強い口調で、こう訴えました。

長男に小さいころから、老いた両親の面倒を見るように約束させてきたのに、

結婚後、自分の家庭ばかりを大事にし、親を顧みない。

本当の息子ならば、そんな仕打ちはしないはず、と。

「DNA鑑定で確かめたい」とまで、言い出したのです。

「約束は守りたい。でも、妻が父を封建的すぎると嫌がるんです。もう、八方ふさがりです」

息子さんは両者の間に立って、本当に困り切った表情でした。

最も近しいはずの親子間のみならず、今日、私たちの周りには、

夫婦・友人間など、様々な人間関係の対立(コンフリクト)があります。

それは直接的な接触場面もあれば、

最近では、ネットなどを介した閻接的な接触によって、

もたらされることもありましょう。

その意味で、私たちの生活は、人間関係のコンフリクトに満ちあふれていると言っても過言ではありません。

そして、ときには「どうせ結局、わかりあえない」と関係の修復をあきらめてしまうことも。

多くの場合、双方の価値観の違いやコミュニケーション不足が「わかりあえない」状況をもたらしているようです。

最初のボタンを掛け違うと、和解はおろか、対話の席に着くことさえ不可能だ、とも聞きます。

このような場合、私は、当事者以外の第三者の活用を勧めます。

ヒントはNHKの番組「ご近所の底力」です。

例えば、ゴミ出しなどの生活上の難問について、近所同士で知恵を出し合って解決しようとする様子が描かれます。

つまり、自分1人で問題を抱え込まず、周囲に相談や援助の輪を広げるのです。

大人同士の対立であっても、関係修復には、

親類の年長者やカウンセラーのような専門家など、

第三者に関わってもらうことがハ新たな転換をもたらすでしょう。

異なる価値観に触れることで、新たな気づきが得られるかもしれません。

また周囲の方に共感されることによって、人への信頼を回復できるかも。

そうした共感的な対話を重ねることこそ、

たとえ遠回りでも「わかりあう」ための道なのではないか、と信じています。

明治学院大学心理学部教授 井上孝代

(聖教新聞 「わかりあう」ために より)


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